代表的な腟炎 vaginitis

細菌性腟症

症状としては腐敗臭を伴う帯下(おりもの)が特徴的です。
これはからだの抵抗力が弱まったときなどに腟内に嫌気性菌が増えて発症するもので、セックスにより人から人へと感染するものではありません。「性感染症の心当たりがないのに帯下の臭いが気になる」という方のほとんどが細菌性腟症と言っても過言ではありません。
「帯下の臭いは」女性にとって切実な問題です。これをきっかけに男女の関係がうまくいかなくなったなどという話もたまに耳にします。
また、放置すると子宮内膜炎、卵管炎そして骨盤腹膜炎などに進展することもあるので必ず治療を受けるようにしましょう。

3~5回の通院(フラジール腟錠による治療)により腟内細菌のバランスは完全に正常な状態に戻り、帯下の臭いも消えます。

カンジダ腟炎

おもにカンジダ・アルビカンスという真菌が腟内に増えることによる腟炎です。
性感染症の中に含まれていますが、実際にセックスで移るケースは稀で、ほとんどはからだの抵抗力が弱まったり、抗生剤を服用したあとなどに菌交代現象(腟常在菌が減り代わりに真菌が増える)の結果発症します。
特徴的な症状は、白い豆腐のカス状、またはヨーグルト状、またはカッテージチーズ様の帯下(おりもの)と外陰部の強いかゆみです。

治療としては抗真菌作用のある腟錠の1回投与と塗り薬を使うことにより3~4日間で症状は著しく改善します。

トリコモナス腟炎

セックスによりトリコモナス原虫が感染することにより起こります。
症状は帯下(おりもの)の臭いと量の増加です。トリコモナス原虫は帯下の中で動いているため、帯下を顕微鏡でみることにより簡単に診断がつきます。

抗トリコモナス薬1回の内服で治療することができます。

淋菌性腟炎(頸管炎)

セックス(オーラルセックスを含む)による淋菌の感染で起こります。
性器クラミジア感染症と同時感染している場合も多い(淋病患者中20%~30%がクラミジアとの同時感染)ことが知られています。 女性の代表的な症状は帯下(おりもの)の臭いと量の増加ですが無症状のことも多いようです。
また淋菌が尿道に感染すると強い排尿痛、頻尿、膿尿(尿に膿が混じる)、および残尿感などの尿路感染症状がでることもあります。男性はほとんどの場合で尿路感染症状がみられます。

抗生剤の内服または静脈注射で治療します。

クラミジア子宮頸管炎

セックス(オーラルセックスを含む)、キスなどによりクラミジア・トラコマティスが感染することにより起こります。
女性の場合は帯下(おりもの)が増える事もありますが、無症状のことも多いようです。男性の場合は尿道から透明な膿が出ることが多く、また痛みを伴う場合もあります。
治療せずに放置しておくと、クラミジアが体内深部に進行し、女性の場合は子宮頸管炎・子宮内膜炎・卵管炎となり、さらに進行すると骨盤腹膜炎、肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)や卵巣炎を引き起こし、子宮外妊娠(卵管妊娠)や不妊の原因となる事もあります。

また妊婦がクラミジアに感染していると絨毛膜羊膜炎をおこし流産、早産のリスクが高くなることも知られています。
さらに分娩時まで保菌していると、産道感染により新生児が結膜炎・肺炎を発症することがあります。男性の場合は尿道経由で前立腺炎・副睾丸炎(精巣上体炎)・肝炎・腎炎になる事があるります。

また注意しなければならないのはクラミジアに感染していると、他の性行為感染症やHIVの感染率が飛躍的に高くなるという事実です。
どこに感染しても治療法は同じで、現在はアジスロマイシンの1回内服法による治療が主流です。医師から完治の診断が出されるまで定期的に通院するようにしてください。