当院の不妊治療について about Infertility treatment

不妊症とは?

排卵期の性交により約20%の確率で妊娠が期待できるとされており、計算上は10周期の性交(排卵期)で90%の方が妊娠に至ることになります。したがって1年間ようすをみても妊娠に至らないご夫婦は本来毎月20%あるべき妊娠率が何らかの原因で下がっている可能性が高いと言えます。
これがいわゆる「不妊」という状態であり、不妊治療はこの下がった妊娠率を20%に近づけようという目的で行います。

妊娠率を上げるためには、なぜ妊娠するチャンスが少なくなっているのかを可能な限り明らかにする必要があります。
例えば、男性側に原因がある場合や卵管に問題があるケースに排卵誘発を行って妊娠率が上がるでしょうか?
答えは当然 "No!" です。

不妊症の原因

不妊の原因(*1)は女性因子が43.7%、男性因子が48.0%、残りが原因不明不妊(基本検査で原因を特定できないもの)と言われています。つまり検査をすることで、約90%の確率で妊娠しにくい主な原因がみえてくるわけです。原因を究明することにより初めて効果的な治療を行うことができます。

[グラフ] 不妊症の原因は、男性因子48.0%、女性因子43.7%、原因不明が8.3%と言われています。男女それぞれに約50%ずつ原因があると考えられます。

(*図1) 不妊症の原因

不妊に対する考え方

妊娠のしやすさには個人差があります。背が高い人低い人、太った人やせた人、お酒が強い人弱い人などなどいろんな人がいるように、それぞれに違いがあるのは生物として当然のことなのです。つまり「不妊」といわれる方の多くは、妊娠する能力は持っているのにほかの人より若干妊娠しにくく、妊娠するまでに時間がかかってしまうだけなのです。
しかしながら実はこの時間というのが結構くせもので、治療期間を十分にとれなかったために夢をあきらめざるを得なくなる方が少なくはないのです。

上述したように排卵期の性交により約20%の確率で妊娠が期待できるとされており、計算上は10周期の性交(排卵期)で90%の方が妊娠に至ることになります。
では妊娠しにくいご夫婦の場合どうでしょう?仮に排卵期の性交により3%の確率で妊娠が期待できるものとして考えてみると、90%の方が妊娠に至るまでなんと72周期(6年)もかかります。(参考文献:Deaton et al.Fertil.Steril 54:1083,1990 原因不明不妊患者の妊娠率は約3%)

[画像]家の窓辺で寄り添う若い夫婦

年齢と妊娠率の関係

人間の生殖年齢は加齢とともに確実に低下していくことが知られています。そしてこの傾向は特に女性において顕著です(*図2)。
これは加齢に伴い卵巣にストックされている卵子の数が減ること、そして卵子の質が低下することが主な原因と言えます。
これらの現象は年齢が上がるに連れ徐々に進むものですが、「卵子数が減るペース」にはある程度個人差があり、極端なケースでは20代の女性でもかなり減ってしまっている場合があります。

最近ではAMH(抗ミュラー管ホルモン)を測定することにより、卵巣に残っている卵子の数を推測することが可能になっています。
AMHは不妊原因を調べる検査ではありませんが、治療を開始するにあたり、普通のペースで進めて良いか、あるいは早いペースで進める必要があるのかを考えるとても良い指標になります。

当院では基本検査にAMHを取り入れることにより、それぞれのご夫婦により異なる「必要なペース」を十分考慮した上で治療プランを立てていきます。

[グラフ] 女性は年齢を重ねるごとに妊孕率(妊娠する力)が下がっていきます。20〜24歳の妊孕率を100%とした場合、25〜29歳は約95%、30〜34歳は約85%、35〜39歳は約75%、40〜44歳は約40%、45〜49歳は約10% というデータがあります。

(*図2) 女性の年齢と妊孕力の変化 (参考:一般社団法人日本生殖医学会HP)
※ 妊孕(にんよう)とは、妊娠する力のことです。

初診、基本検査、治療の流れ

初診時

これまでの経過を伺ったのち、妊娠成立のメカニズム、不妊原因、必要な検査について説明し不妊に関する理解を深めていただきます。
お話には約30分の時間がかかりますので完全予約診療となります。

[画像] カウンセリング室

診察の流れ

第1ステップ
基本検査
初めの2ヶ月間で必要な検査を行います。十分な原因検索無くして適切な治療は不可能です。
尚、この間は時間を無駄にすることのないようタイミング指導も併せて行います。検査が終了した時点でご夫婦にとってどのように治療を進めて行くのがベストかを説明します。
第2ステップ
タイミング指導
(3 〜 6周期)
規則的な自然排卵がある方には、原則排卵誘発はせずに超音波検査や尿検査により排卵期を見つけ、タイミングを合わせるお手伝いをして行きます。
第3ステップ
人工授精:AIH
(3 〜 6周期)
内服薬や自己注射により排卵までのお手伝いをしながら、排卵期に調整した精液をカテーテルを用い子宮内に注入します。不妊治療における位置付けとしては体外受精・胚移植の手前に位置します。
第4ステップ
体外受精・胚移植(IVFーET)
顕微授精(ICSI)
最も高度な不妊治療であり人工授精ではクリアできない不妊原因にも対応できます。大まかな流れは以下のようになります。
  1. 卵巣刺激:FSH・HMG製剤などにより複数の卵胞を育てます。
  2. 採卵:卵胞を穿刺し卵子を採取(採卵)します。
  3. 媒精または顕微授精:採取した卵子と精子を混ぜ合わせる、または顕微鏡下に卵子内に精子を注入する(顕微授精)ことにより受精卵を作ります。
  4. 受精卵培養:培養器の中で2〜6日間、受精卵を培養し育てます。
  5. 全胚凍結:2〜6日間の培養で得られた受精卵(胚:分割期胚〜胚盤胞)を全て凍結保存します。
  6. 凍結融解胚移植:2〜3ヶ月後にホルモン剤を投与し子宮内膜のコンディションを整えた上で融解した胚をカテーテルを用い子宮内に移植します。一般に採卵した周期にすぐ胚移植をする新鮮胚移植よりも凍結融解胚移植の方が妊娠率が高いことが知られています。